原作小説未読で映画「キリエのうた」を見た①
- 「こっから」からハマった新規の北斗担
- 元々舞台オタクのため役者としての松村北斗さんも大好き
- 原作小説はあえて未読
- インタビューなどの事前情報もほとんど入れていない
- 予告動画だけ見た(北斗くんが見たくて)
- うっかり事故で目にしたちょい情報はある(あとで書きます)
という状態で映画「キリエのうた」を見た感想です。
原作未読だからこそ、映画の描写だけでどのように感じたかを残しておきたかった。
すでに購入はしてあるので、書き終わったら読むつもりです。
元々鑑賞前から多くの人が懸念してたと思われる「地震描写」「性的描写(ラブシーン)」のことにも触れたい。
たぶんどうしても夏彦中心になると思います。
ちなみにこれはネタバレなしの感想ですが、見てよかった。
『作品は脚本が8割』が自説で、説明過多な台詞回しにブチギレることの多いめんどくさいタイプの舞台オタクですが、ものすごく視聴者を信じた描き方(台詞回し・役者の表情や空気感、身体感・カメラワークなど非言語表現を多用)でめちゃくちゃ嬉しくなってしまった。
監督やスタッフ陣の力量も然りですが、その非言語表現で演じきる役者陣が良かった!
ただ後述しますがもう一度真剣に向き合って見るにはわたし的にしんどい描写がありました。
「良かったらスト布教してくれた友人誘ってもっかい行こ~かな」とか思ってたんですがちょっと迷ってます。
見たことに後悔は全くないです。面白い作品だった。
【追記】
2日経って15日(日)、何だかもう一回確かめたい気がしてきています。
やっぱ友達誘って頼むから見てくれってお願いしようかな…
音楽映画「キリエのうた」
- 2023年10月13日公開(10月13日鑑賞)
- CAST:アイナ・ジ・エンド、松村北斗、広瀬すず、黒木華 他
- 脚本:岩井俊二
- 公式サイト:音楽映画『キリエのうた』| 10月13日(金)公開
目にしていた情報
うっかり見てしまったシナリオ周りの情報。
ネタバレ…とまではいかなくとも余計な事前情報ってところでしょうか。
うっかり知ってしまった事前情報は
- 「夏彦の行いはそれ相応にクズ」ということ。
- 「キリエとルカの両役をアイナさんが演じる」映画ギミック。
そのノイズイメージがあったからかもしれないけど、脚本としては(台詞としては)一言も誰も直接的には言わないが、《消えたフィアンセ》である希(きりえ)に対して、純然たる愛で探しているというわけではないと強く感じました。
そもそも本作におけるKyrieという路上シンガーは、キリエ当人ではない。
彼女の本名はルカ(路花)で、キリエ――希は姉の名前。
その希と恋人だったのが夏彦。
また、2011年と2018年と2023年を行き来するように描かれ、かつキリエとルカの両役をアイナさんが演じる…というのが映画ギミック。
わたしは釜山の映画祭インタビューの一部を見て、お客さんから北斗くんへの質問で『アイナさんがキリエとルカの二役演じる』という情報だけ知っちゃってたんですよね。
そしたらむしろ混乱してそのギミックに派手にミスリードされるなどした。
ほんと映画の最初のほうは逆だと思ってたんだなー、姉と妹が。
鑑賞後に思えば「なんでそう感じたんだ?」って感じだけど。
性的描写:強姦未遂シーンがしんどい。夏彦と希のシーンは短い
どこまでを性的描写に含めるかちょっとあれですが、わたしのさじ加減で「気になる・なりそう」なところだけ。
夏彦と希(きりえ)の絡み
まずこの二人。
キスシーンは夜の神社に二人で向かうところからあります。
まだ付き合ってないが、希→夏彦への感情は知られている状態。
それでも希がかなり積極的に言葉を投げるのですげ~(小並感)など思ってたな。
あ! あのさあ! これヘキの話なんでどうでもいいんですけど、夏彦が嫌がらないことから希からキスしてみて、「…止まらないです」って4回くらいするのめちゃくちゃエッチやん…(素直)とびっくりしてしまった。
積極的な女が好きなので(性癖)シンプルに興奮した。
こんな女わたしだって流されて付き合ってまうかもしれん。いや夏彦くん実際どうなんですかね? この話は後述するか。
ラブシーンのほうはというと、言ってしまえば『裸(映るのは上のみ)の夏彦が上、上下身につけた状態の下着姿の希が下でベッドで共寝してる』…ってレベル。あ、ここでもキスはした気がする。
このテのシーンはもっと最悪な想像をして覚悟キメていたので意外と平気だったな。
どっちかっていうとその前後、
- 夏彦が希をバンザイさせて上脱がすところ(超個人的に嫌な記憶があるため妙に生々しくて死んだ)
- 下着姿の希の腹あたりから腰~太ももを舐めるように撮るカット
この2点のほうがしんどかったですね。
特に後者はそんなジットリ撮らなきゃだめですか泣
そのカメラワークは誰目線なんだよ泣泣泣
映画の本筋からはズレる話ですが、女の子が性的消費されてるのを感じると死にそうになります
路花(るか)への強姦未遂
あとはKyrieこと路花(るか)への強姦未遂描写。
原作未読でもイッコさんがルカ置いてって知らんおじさんの家に残された段階でもう(察し)って感じでしたけど、そりゃそうなるよね~…みたいな。
温厚そうな、優しそうななよっとしたおじさんだったのに、目ぇギラギラさせて大声で怒鳴って豹変する恐ろしさ。
年上の男に家の中追いかけ回されて、細い廊下で積まれたダンボール蹴ってくるところとか怖かった。
捕まって雑な姫抱きで逃げられず身動き取れずにベッドに連れてかれる恐怖も。
性的に加害される恐怖って、まあどうしてもわたしはリアルに感じてしまうのでほんとにしんどかった。目ぇ瞑ろうかと思った。見届けるって決めたから必死に目をそらさないようにしてたけど。
さらに世の中には怯える女の子を見て興奮するカスが存在するので、そういった消費をされかねないシーンであることに胸を痛めていました。
話それるけど、MIU404という神ドラマでは製作側が明確に「そういう消費をされないように注意して描写した」というようなことをおっしゃっていた記憶があります。シナリオ上必要なことと、描写方法って別軸だよねって思って安心したんだよなあ。というのを思い出した。
しかもここもさあ~…ルカちゃんの表情や身体性、撮り方がじっとりしてるんだよ泣
艶めかしいうえにルカちゃん当人は「(自らを差し出したら)イッコさんを許してくれますか」とか……
極めつけはこれ、許すよって言われたらルカちゃん「(自分を差し出して)お願いします」って言うんだよ。AV?(偏見)
この台詞運びだけはガチでキツくて泣きそうだった。
地震描写:正直かなり怖くて泣いた。津波や水害は概念映像
さて、これは公開一週間前くらいだったかな、わたしが気がついてなかっただけかもしれませんが、公式サイトなどでお知らせされていた地震の描写についてです。
本作は宮城県仙台市出身である岩井俊二監督による、
数奇な運命と無二の歌声を宿したキリエの音楽がつなぐ壮大な愛の物語です。
そして本作には、地震描写および津波ならびに水害のシーンを想起させる描写が含まれております。
ご鑑賞にあたりましては、予めご了承いただきます様、お願い申し上げます。
石巻、大阪、帯広、東京、と岩井監督のゆかりある地を舞台に、
13年に及ぶ魂の救済を見つめた物語をぜひ見届けていただければ幸いです。
と、公式サイトより。注意喚起が出るレベルには描写があります。
すずめの戸締まりも結構「あーこれは確かに予め言わないとダメなレベルだわ」と思ったんですが、あれより強烈だった。
わたしは当時関東住みの中学生でしたが、そのレベルの経験でもかなり怖かったです。当時の記憶を思い出した。
かなり高台にあるボロい校舎の、しかも4階の部室にいて。
ボロすぎて最初の揺れが「運動部が室内でトレーニングしてるのかな(雨の日はそれで廊下との壁がガタガタいう)」とか思うレベルの校舎。
地震だと判明してからは部屋の中心に皆で固まって、部屋の半分を占める資料室の大きな地図や棚が倒れていくのを見てた。
家に帰されてから母の見ていたテレビで流れた、津波の映像が忘れられません。
そんなレベルの関東人でも怖かった。揺れ続ける部屋の中での描写であることは覚悟してほしい。
津波、水害については直接表現はなかったように思います。
台詞で津波が迫っていることがわかったり、文脈的にそれを示唆するイメージ映像(海)が入るとか、そういう感じ。
地震描写、わたしはここ明確に怖くて泣いた。
ただ、映画というエンタメに限らず、ほとんどのシナリオエンタメは『疑似体験』という要素が強いと思っています。少なくともわたしにとっては。
誤解を恐れず言ってしまえば、『実際には生命の危機に脅かされることなく、マイナスな感情をも強く自分事として疑似体験できる』ことに価値を感じている。
ホラー映画やゲームと同じようなことです。最悪な気持ちになったり、恐怖したりしたい。
めっっっちゃ怖くて半泣きでしたけど、それができるのが映画や演劇の楽しさなので…。
自分のそういう感情をエンタメにするの大好きな、新手のドMみたいなもなので、鑑賞後のダメージはほぼないです。
だからここはほんとに人によりけり。
だめかも知れない、心配だという人は無理せずそのシーンだけ目を瞑るのもいいと思います。
それはそれとして、ルカちゃんの風呂上がり、上下とも下着を見に付けた状態でそこそこ尺を割いた揺れのシーンを完走する必要性はあったんですかね…とか思っちゃった。し…下着じゃなくてよくない?!タオル巻いただけじゃなかったからまだマシかな。
もちろん被災時にお風呂に入ってる人もいたと思うしそれを描きたいなら…まあ…そうですね…ではあるけど…
しかも、女性のリアリティという意味でも少し…
家にいて彼氏と電話してんなら別に出かけないし…って、リラックスしてブラつけないでTシャツばっ…て着ちゃう気がする。これずぼらなだけ? だけな気がしてきた。
映画作品としての描写の『湿度』
わたしは恥ずかしながら同監督作品を見たことがないのですが、勝手に受けた印象+今作の予告から少なくとも『キリエのうた』は湿度高めの生々しさがあるだろうな…とある程度覚悟してました。
想像よりは湿度低かったな。多少。
湿度エグくてショック死しないようにまあかなり最悪の場合を想像して(友人に「見終わって撃沈してたら慰めてくれよな」と言ってから劇場入りした)たので、だいぶとマシだった。
でもあるよね、『湿度』。
この映画がものすごい好みかっていうと、そうじゃないと思うのに何だかいつまでもめっちゃ頭に残ってる。
執着とか、そういう感情の『湿度』のことは大好きなので(強い感情と文脈を愛しているため)夏彦はほんとに大喜びしながら見ちゃったよね。
あと関係ないけど、個人的に『~彦』という名前がヘキなので、松村北斗さんが夏彦という名前の役を演じられるってわかった段階から喜んでたな。そういや。
原作未読者が映画初見で読み取った解釈
作品としての注意喚起描写と、『湿度』の話したので、そろそろもっと作品の中の登場人物の話とかしたい。
原作小説読了後と解釈を比べるために。
希と夏彦の関係
まず、初めて希が出てくる過去のシーン。
帰ってきてた? 遊びに来てた? 夏彦に会いに来た希。
あのあたりから受け取ったのは以下の通り。
- 希が夏彦にバレンタインチョコを渡していた。
- =希は夏彦が好きで、アプローチ済み(好意開示済み)。
- 付き合うような結果になる返事はしていなさそう(気まずそうなので)。むしろ曖昧にしてスルーした可能性すらある。
- 夏彦は希の先輩(年上)。
- 希は神社が初めてらしい(あとで分かるけどキリスト教徒であるため*1)。
ラブシーンのシチュエーションもなんかなかなか(個人の感想です)だったな。
受験の前泊とかそういう用のホテルかな? で夏彦が泊まってる部屋に希が忍び込む形で二人きりになるやつ。
あれ、いや前泊は違うか? その後の描写で模試の点数落ちてたんだっけ? じゃああのホテル何?
あの付き合いたてのめちゃくちゃ盛り上がってバカみたいにいちゃついたり一生ヤッてるとかそういう時期のやつ…いやこれがしんどいのは個人的すぎるけど…
なんであんなにリアルなんですか!? 描写も芝居もすごいってことなんだけども!
妊娠と曖昧な言葉
希が妊娠発覚してあたりから格段にしんどかったな。
ガチどうでもいいけど(わたしの話なので)心当たりありすぎてしんどいんだよこれ。
薄々「あーこいつ別にわたしのこと好きじゃないんだよなほんとは」みたいなの。
『積極的にアプローチされて浮かれちゃって、自分も相手を好きになったような気がしてる』男。
あ、いやわかんないけどね?
わたしの解釈としては、夏彦が実際どうかは原作小説も読んでから考えたいけど。
映画の描写や尺だとね? そう感じた。
鑑賞後にちょっとだけ感想巡ってみたら、夏彦は夏彦で希にのめり込んでった(だから勉強が疎かになっていた)ってあってびっくりした。このへんは小説読まないとな。
こういうスタートの男を信じてないのでのめり込んでるのは『女』であって希じゃないだろ(偏見)みたいな。そうじゃないならそのほうがいいんですけど。
さすがにちょっと嫌な男にしすぎか。夏彦は夏彦なりに希を愛してたって思いたくもあります。
結婚とか子供とかそういうこの先の愛じゃなくて、ただ目の前にあって好きとか幸せとか感じる愛。
しかし予期しない妊娠で、何もかも覚悟がついてないまま、時間だけが過ぎていこうとしている。マリッジブルー、いやマタニティブルー的なこと? でも最悪すぎるよ
でも露骨に態度とか言葉とか減ったり曖昧になったよね、夏彦。
婦人科行って隣にいてくれないのとか(婦人科によっては女性しか入れないタイプのもあるけど。玄関というか入口にはおんねや…みたいな)。
ベッドで不安を覆い隠すように二人で抱きしめあってるところもさ…希の頭を抱えるように抱きしめてるけど…
「堕ろしてほしいとか思うものなんじゃないの」とか「産んでいいの?」って希が聞いても、積極的に肯定してくれる感じじゃないのがさ。
この希を前にして「堕ろしてほしい」とも言えないけど、親やその他諸々とか、今後とか考えたときにすぐさま「産んでいいよ」、いやむしろ「産んでほしい」とかも言えない夏彦。
いや仮に夏彦が「産んでほしい」っつっても決めるのは身体に多大なる影響が出る希なんで、知らんわボケ、彼女の意思こそがすべてだろと思う派なんですけど、それでもさ。希が欲しかったのは味方や安心じゃん。
一応「いいよ」と言ったけど、後ろめたさ? いっぱいいっぱいで希のことまで気が回らない感じ? 正面から向き合えないから逃げ回って曖昧なままみたいな?
男の非誠実、といってしまえばそれまでなんですけど。それだけじゃない、もしかしたら同じ立場なら自分だってそうしてしまうかも、と思わせられる。
内容が内容なので認めたくないけど、誰しもがそうなる可能性のある気持ちと態度…
いやほんとに松村北斗さんは非言語芝居がピカイチじゃないですか!!?
もちろん台詞も諸々も然りですが、本当に北斗くんの芝居における身体性(力の入れ具合・抜き具合や、呼吸など)、その場面でその人物の在り方…
素朴な芝居なのに確実にそこに在って、リアルな揺れ動き(感情、身体ともに)が観客に手に取るように伝わる。
恋マジとか、シナリオは総合的に言うと最後が尻窄みすぎて暴れちゃったんですけど、北斗くんの芝居はすごくすごく好きでした。
あれを見たときのこと思い出した。好きだな…
松村北斗さんみたいな美しい人(見目のみならず感情の動かし方含めた意味)、ほかのどこにもいるわけないんですが、こう、我々のすぐそばにあってリアルで“居そう”な感じ。
素朴でリアル、そういう芝居めっちゃくちゃ合うし上手いと感じました。
ものすごくショッキングだったり激しい芝居ではないけど、じんわりとずっと心に残り続ける芝居。
見てから2日経ってもまだ鮮明に思い出せるな~…。
現実から逃げるように受験に向かって。希にも当然伝わってるはずなんですよね。夏彦の曖昧さが。
連絡来なくなったり全然会えなくなったりする感じが個人的にちょっとトラウマ…
だから震災の日、最後の電話。あれは呪いですよね。
希当人がどういうつもりだったか、もう誰にも分からないし分からないままでいいとすら思うんですが、夏彦を縛るには何よりも有効だった。
震災の傷のみならず、そこに「嫌な自分」を何度も痛感させられるような記憶と感情も結びついて、反芻し続ける。
映画で最初に夏彦が登場するシーン、マオリさんの家庭教師として家を訪問するシーンですが、あのとき「ものすごくやつれてる」と感じた印象は間違ってなかったんですよね。
何年も何年も夏彦の心に重く沈ませ続けて、重りのように動けなくする。
良し悪しはともかく、間違いなく「ずっと一緒」だったんだなあ…。
書き終わんねえ!
8000字超えたのにまだ書きたいこと終わってないし(ルカとイッコさんの話ぜんぜんできてない!)全部書いてたらいつ出せるかわからないし、このままお蔵にしそうで嫌だったのでとりあえずここまで一旦区切る。
余力があれば続き書きたいし、そもそもまだまだ松村北斗さんのこと褒めたりてない!!!!!!!!!!!!!!!!!!
*1:宗派まではわたしに知識がなく初見では分からなかった